最近、ネット対談をさせていただいたり、まちづくり講演会に参加させていただいたりと充実した日々を過ごしていて幸せです^^書きたいことが多すぎてブログ記事がおいつかないのですが・・・。まぁ、ゆっくりのんびりいきましょう。
今日も昨日にひきつづき、フェアトレードについてお話します。
・・・と書いている途中で、緊急地震速報が鳴って心臓がバクバクしております。伊予灘が震源ということでお近くの方は夜中におどろかれたかと思います。落ち着いてまず身の安全を確保してくださいね。
12日の『「助け合う」自助・共助・公助』という記事で災害時の市民災害救助隊マニュアルや、災害にそなえて最低限できる自助についても書いておりますのでお時間のあるときになど読んでみてください(記事を読む)
さて、
ええと、実は昨日書いた記事なのですが、朝になって読み返してみたところ、情報があまりうまく分類できていないため大変よみにくい記事になっていると感じました。
そこで、昨日の記事のなかで書いていた話題を3つにわけ、あらためて記事をかきなおすことにいたしました。
そういうわけで、ひとつまえの昨日の記事は「フェアトレードって何?①フェアトレードの定義(記事を読む)」というふうに編集、加筆、リンクを充実させています。
今日は「②フェアトレードの課題」について取り上げます。
◇フェアトレードの課題
1.「定義」のあいまいさ
「フェアトレード」は公正取引や貿易を意味すると前回の記事でかきましたが、そこでも指摘したとおり、フェアトレードの定義自体があいまいであるという問題点があります。
たとえば次のような文章があったとします。
「生産者と販売者が公正な取引をし、第三者機関が保証する」
一見するとフェアトレードについて正確にまとめられているように感じられます。しかしこのなかには
●個人の生産者を含めるのか、生産者組合に限定するのか
●公正な取引であることを生産者・販売者・第三者機関の誰が保証するのか
●生産者に対して取引をする以上の支援を含むのか含まないのか
このような議論がたった一文のなかに含まれています。
そのため、「フェアトレード」と書いてあったとしても各企業・団体がフェアトレードをどのように捉えているのか、どのような目的と立場で、どの範囲までをフェアトレードという言葉にふくんでいるかという点に違いがでてきます。すくなくとも以下の4種類の分類ができます。
・貿易や取引におけるルールとしてとらえる
・生産者や労働者の自立支援もふくめた「社会貢献」として行う
・市場経済全体の改善のための仕組みとしてとらえる
・ライフスタイルのひとつとして提案する
2.「認証ラベル」が抱える問題
フェアトレード認証ラベルには様々な種類があり、国際機構が発行しているものや、企業独自で発行しているラベルがあります。基本的には生産・流通の過程で第三者機関や企業が責任をもって監査を行い、公正な取引がされていることを保証するための目印です。
こちらの国際フェアトレードラベル機構Fairtrade International(FLO)の日本NPO法人FLJ(フェアトレード・ラベル・ジャパン)の認証ラベルを見たことがある、という方も多いのではないでしょうか。FLO、FLJが発行する「認証ラベル」はフェアトレード認証ラベルのなかでは普及率がもっとも高いという利点がある一方、使用料金が高く販売者だけでなく生産者も負担をおう、という難点があります。
●何故、使用料金が高いのか、というとFLO,FLJ(公式HP)では、製品ごとの認証を行っています。つまり、ひとつひとつの製品に対して、その製品につかわれている原料が生産されてから完成品になるまでの、すべての過程(輸出入、加工、製造工程)でFLOが定めた基準が守られていることを証明しているためです。
◇コーヒーの場合 (参考HP⇒社団法人 全日本コーヒー協会)
●コーヒー豆の種まきなど生産・収穫作業をおこなう農場
●カカオの加工(脱肉・水洗・乾燥・脱穀・選別・精選)、等級選別をおこなう工場
●品質鑑定、焙煎、配合、粉砕、抽出工程がおこなわれる工場
●ビン詰め、袋詰め、輸出作業がおこなわれる倉庫
●輸出入国での植物検疫、食品検疫、残留農薬検査をおこなう機関
製品が完成→各団体・企業への納付、完成品の販売
このようにコーヒー豆が栽培・収穫されてから●印がついている全ての過程において、児童労働がなく、奴隷制でもなく、賃金体制が公正であり、労働環境がFLOの基準を満たしていることを証明しているわけです。
◇ジュエリーの場合はどうでしょうか?
○採掘、洗浄
○品質・等級選別
○カッティング・研磨
○企画・デザイン
○セッティング・組み立て加工、包装
・・・を経て
○輸出
○検査・鑑定
○販売
だいたいこのような過程になります。コーヒーの場合は多くが生産国と輸入国の2カ国間の監査ですみました。しかし、ジュエリーの場合、この○印がついている過程のすべてが違う国でおこなわれていることもあります。ということは、それだけ監査人や資料・データの移動などに余分な手間と費用が、かかってしまうということになります。そのためその過程すべてに監査をいれる認証マークを取得するにはお金がかかる、というわけです。
※フェアトレード認証はあくまで製品に対する認証であり、製品がはいっている包装物や、提供される店・食器、また製品をつくる道具にまで認証がおよぶものではありません。
3.「価格」のあいまいさ
すべての製品にその原料があり、製造過程があるのですがグローバル化がすすむ現在、「製品のブラックボックス化」とも言われるように、その過程は非常にわかりづらく、複雑になっています。そして、フェアトレード商品に対してはその「価格」が議題にあがることも多いのです。
●なぜフェアトレードをうたう商品はこれほど高価なのか
●同じ商品であっても価格が違うのはなぜなのか
という素朴な疑問です。
次の項目「フェアトレードの費用対効果」にも関連するのですが、フェアトレードであることが製品にたいして充分な付加価値として機能していないという問題があります。そのため製品がフェアトレードであることに加え、原料にこだわる、デザインにこだわる、日本の市場にあわせて品質管理を徹底するといった、さらなる付加価値の追加がひつようになります。また、企業によっては生産地への技術提供や、環境保護にかかる費用がつけくわえられていることもあります。
◇認証マークつきのフェアトレード商品費用うちわけ一例
原材料費+デザイン費用+フェアトレード料金+監査費用+環境保護費用+技術提供などにかかる費用+輸出入費用+宣伝費+販売店舗費用+人件費+企業・団体利益+他
こういった内訳が各企業ごとに出されていた場合、価格説明は一目瞭然です。
しかし、全体の収支が発表されていても、こういったひとつひとつの製品にかかる費用について内訳を説明する必要があるとすれば、それ自体がまたあらたな費用になってしまいます。
しかし、企業や団体が社会貢献としてではなく、通常の貿易・取引のなかにフェアトレードを取り入れるさいには、そもそもの前提に対しても議論がおこります。
●企業が製品を製造する全過程に責任を持たなくてはいけないのか
●生産地や加工工場のある地域や国も責任を持つべきではないのか
●ほんとうに消費者はその責任を求めているのか
フェアトレードに関してこういった議論がされるのは流通量が少ないといった問題を抱えているためでもあります。
同じチョコレートであっても、有名なブランドから発売されているチョコレート同士やスーパーで大量に売られているチョコレート菓子の値段の違いに疑問が投げかけられることは少ないのです。この背景にあるのが、上でも言ったようにフェアトレードが付加価値として機能していない、ということになります。
4.「フェアトレードの費用対効果(コストパフォーマンス)」の問題
上の項目でも書きましたが、2012年に私が短大のゼミでフェアトレードについて研究発表を行ったさいに感じたことのひとつに「フェアトレードという言葉は宣伝・広告効果が低いのではないか」ということがあります。
オーガニック、エコ、という言葉にくらべて認知度や定着度が低く、企業・団体が積極的にフェアトレードであることを宣伝・説明する費用(コスト)が、それをしたうえで得られる利益よりも高くついてしまう。費用対効果(コストパフォーマンス)が企業・団体側にとって非常に悪い現状があるように感じるのです。
実際、フェアトレード商品を扱っている企業であるにも関わらず、そのことを広告に利用しないという現状があります。また、研究発表に協力してくださったフェアトレードをとりいれている企業内にも専門の担当部署がなかったり、担当者にいきつくまで何度もフェアトレード自体の説明を繰り返さなければならなかった、ということもありました。
つまりオーガニックだからという理由で購買する人は多くても、フェアトレードだからという理由で購買する人の割合が低いのではないか、ということです。
また、製品が日本市場にあわせた品質管理や製品の完成度を保証するまでにいたっていないという現状もあります。そのことをきちんと理解したうえで修理や製品保証をおこなうという企業努力がさらに必要になってしまうのです。
つまり、販売者からの目線で考えでみれば「フェアトレードは費用対効果が非常に悪く、費用と責任ばかりがかかってしまう」ということになります。
5.まとめ
・定義のあいまいさ
・認証ラベルがかかえる問題
・価格のあいまいさ
・費用対効果の問題
4つの課題をあげましたが、これらの問題にはフェアトレードという仕組み自体がまだ発展途中のものであり、制度として完璧なものではないことが知られていないということが背景にあると言えるでしょう。
定義のあいまいさは、フェアトレードの認知度があがるにつれ、団体の活動がすすむにつれ、ある程度まとまりつつあります。いずれ国際機関が正式発表を行うこともあるかもしれません。
認証ラベルがかかえる問題についても、活動がすすむうちに普及率の高いものに自然と統一され、費用については参加国や参加団体が増えれば解決されるでしょう。
価格のあいまいさについては市場のひろまりと同時に解決され、あるいは問題提起がなされいずれ解決にすすむといえます。
しかし、最後の費用対効果が悪いという点について、認知度をあげるための努力はこれからもっと進むだろうと思います。しかし、生産者や労働者に対して公正であることが商品の付加価値として機能していないとすれば、それは販売(生産者)と消費者といった経済上の問題だけではなく、むしろフェアトレードが必要とされる問題の本質と合わせて、社会的な問題として捉えられるべきなのではないか、と思います。
これまでのように「悲惨な現状」をうったえる手法は、効果的ではなかったのかもしれません。研究発表では、あえて悲惨な現状をつたえる写真などは多用せず「小さな消費が世界を変える」と銘うち身近な企業の取り組み紹介、生産者の笑顔や村づくりの様子を紹介しました。
いまの生活にプラスしてフェアトレードを生活に取り入れるのではなく、より良い商品、誰かのためになる商品を知っておきかえる「楽しい消費」を促すことを目的にしたピーアールがより有効的であると判断したからです。
今日も最後までお付き合いくださってありがとうございました。